めにまね
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猫と鈴(立ち読み版)§3 (了)

「気に入ってもらえて良かった」
「良かったなら良かったよ」
 アホな会話をしてしまった。
 してしまったついでに思い切って頭を胸に埋めてみた。我ながら大胆だなと思ったけど、顔を見つめ合っているのが恥ずかしくて、どこかに頭を埋めて隠したくなったのだ。
 ぬるっとした感触が理樹の頬と首筋に伝わった。
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猫と鈴(立ち読み版)§2

 はかとない甘い声の意味に、理樹は唯湖の太ももにつけている頬が急に赤らんでいくのを感じた。
「逃げ帰る必要はない、よね」
「その通りだ」
 振り仰ぐと、頭上の山脈が大きく上下していた。唯湖の呼吸が荒いのが手に取るようにわかる。
 もちろん、自分もだ。
 すごく、重いんだよな。
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猫と鈴(立ち読み版)§1

 要領のいい人はいるものだ、と直枝理樹は思った。女子寮は夜間の男子入寮については厳しいものの、昼間はある程度の自由がある。そして旧館にある来ヶ谷唯湖の部屋と来たら、女子寮の租界とも言われる治外法権の土地で誰もが近寄ることさえ恐れるらしい。
 つまり、フリーパス。
「そんなわけで存分に楽しんでくれたまえ」
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長門有希の観察 §32(HP編13)

「あんたは、なんか持ってる。きっとあんたがあたしにツキを運んできたんだわ」
「そういやさっき『ずっとツイてない人生』とか言ってたな」
「あんたに会ってから、あたしの人生はギアがかかり始めたの。今まで変えようとして空回って何も変わらなかった世界が、急にかみ合いだして、どんどん面白いことが増えてきて、毎日が前に進んでく感じなの」
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長門有希の観察 §31(HP編12)

 春夏秋冬を一周したかと思えるほど長い数秒に俺が耐えきれなくなる寸前、バスルームの上の方から
(条件がある)
 と、声が聞こえた。

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長門有希の観察 §30(HP編11)

(今、情報統合思念体の全てがあなたたちを注目している)
「それは聞いた」
(そうではない)
 長門は俺にとんでもないことを切り出した。
(今この瞬間、この世界に新たな大規模情報爆発が始まろうとしている)
「なんだって」
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長門有希の観察 §29(HP編10)

 何秒か間の悪い空白が生まれた。しかし辛抱強く待つと。
(私の仕事はあなたたちの観察)
「それは知ってる。悪いとは言わないさ。だが、これはやり過ぎだろう」
 ホテルの名前はTANGO・A。並び替えればNAGATO。簡単なアナグラムだ。ハルヒがネットで決めた時から介入には気付いていたさ。長門が自分のテリトリーで安心して見届けたいという気持ちは解るから黙ってもいた。ここならボッタに遭う心配もないしな。
 しかしこの部屋の濃密な気配は見届けるなんて生やさしいもんじゃない。天井や壁、床。部屋中から視線を感じる。この感覚は先日と似ている。俺とハルヒと長門が同衾した田舎屋の寝室で、長門の視線に耐えながら俺とハルヒが事に至ったあの空間と。
 ただ視線の量が段違いだ。目の前に長門がいた時より悪い。これじゃまるで長門の胎内にいるような感じだ。四方から濃密な気配を感じて息が詰まりそうになる。

長門有希の観察 §28(HP編9)

 仕方ない。
 俺はハルヒの指先を外して立ち上がると、いつになく不安げな瞳を揺らしている小天使に向かって手を振った。
「わかった。ちょっとした手品をしてやろう」
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長門有希の観察 §27(HP編8)

「なんか綺麗すぎて落ち着かないわ」
 俺の気持ちを寄り添ったままのハルヒが代弁した。白熱灯色の間接照明がむらなく配光された室内は塵一つなく掃除されていて、清潔というよりはどこか病院めいた印象を受ける。ハルヒの不安も諾なるかだ。
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長門有希の観察 §26(HP編7)

 しかし女同士の間にはまた違う理屈があるらしかった。
「ずっとツイてない人生だなと思ってましたけど」
 左腕を抱えた女がらしからぬ台詞を紡ぐのを、俺は間抜け面で見つめていたろう。
「今まで貸した分は返してもらわなきゃね」
「ええ」
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