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2005-03-19
倫敦指令X2 §5
- Fate/stay night/倫敦指令X2 ■ Posted by さかつき at 2005-03-19 Sat 10:00:00 ■
すっかり気の抜けた凛が、元の服に着替えたセイバー達と池の畔に出たのは、一時間も後のことだった。
水面にはボートが幾艘も浮かび、涼しげな恰好のカップルが船遊びを楽しんでいた。それを見て士郎は、瀬尾晶謹製の仕様書にボートでの撮影がなかったことに安堵のため息を漏らす。隣の少女が、睦まじげな恋人たちの姿に表情を翳らせたことに気づく余裕はなかった。
高緯度ならではの長い日差しを浴びて、芝生の上には思い思いに座り込んだり寝そべったりする姿が見受けられた。だが快適そうな見かけとは裏腹に、水辺は思ったほど過ごし易くはないようだった。
「欧州の夏っていえば湿度が低いって聞いていたけど、意外と蒸すわよねえ」
「ええ、冬木と土地の成り立ちは違いますがここも水の力の強い土地です。わたしが以前来たときは湿地帯でした。よくもここまで整形したものだ」
「ああ、ここは昔からある町だもんねえ」
「ええ、何度か訪れたことがあります。それほど大きな戦いではありませんでしたが……」
「セイバー」
古い来訪者の言葉を遮って、士郎は貸しベンチの村から外れた、木洩れ日の中の一角を指差した。
「あそこらへんに空いてる場所があるぞ」
「ああ、良いかもしれません」
「なに?」
(士郎はわたしが昔話をするのを好ましく思っていません)
早口で囁() くと、セイバーは小走りに歩み出る。
「では先に場所を取っておきましょう」
「ああ、頼む」
... Read More
水面にはボートが幾艘も浮かび、涼しげな恰好のカップルが船遊びを楽しんでいた。それを見て士郎は、瀬尾晶謹製の仕様書にボートでの撮影がなかったことに安堵のため息を漏らす。隣の少女が、睦まじげな恋人たちの姿に表情を翳らせたことに気づく余裕はなかった。
高緯度ならではの長い日差しを浴びて、芝生の上には思い思いに座り込んだり寝そべったりする姿が見受けられた。だが快適そうな見かけとは裏腹に、水辺は思ったほど過ごし易くはないようだった。
「欧州の夏っていえば湿度が低いって聞いていたけど、意外と蒸すわよねえ」
「ええ、冬木と土地の成り立ちは違いますがここも水の力の強い土地です。わたしが以前来たときは湿地帯でした。よくもここまで整形したものだ」
「ああ、ここは昔からある町だもんねえ」
「ええ、何度か訪れたことがあります。それほど大きな戦いではありませんでしたが……」
「セイバー」
古い来訪者の言葉を遮って、士郎は貸しベンチの村から外れた、木洩れ日の中の一角を指差した。
「あそこらへんに空いてる場所があるぞ」
「ああ、良いかもしれません」
「なに?」
(士郎はわたしが昔話をするのを好ましく思っていません)
早口で囁
「では先に場所を取っておきましょう」
「ああ、頼む」
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2005-03-15
倫敦指令X2 §4
- Fate/stay night/倫敦指令X2 ■ Posted by さかつき at 2005-03-15 Tue 10:00:00 ■
「なによ、口紅がそんなに珍しいの」
凛の言葉にうろたえる士郎の様子は、見る方が可哀想なほどだった。
「いや、だから別にそういうわけじゃなくて、見とれてたとか見とれてなかったとかそういうことじゃなくって、ただ、遠坂がそういうのつけるの見たのが初めてだから珍しいっていうか、いや、珍しいっていっても似合ってないわけではなくて、むしろ必要以上に似合ってるけれども、やっぱり遠坂はスッピンの方が可愛いというか、化粧しちゃうのは……」
何をいってるのか自分でもわからないまま言葉を繰り出す士郎を見ていると、凛は心の奥底がぐっと持ち上がってくる感覚に捕われる。しかしこのままではこみ上げてくるものに突き動かされて、自分もなにを言い出すかわかったものではない。
「しょうがないなあ……」
そんなわけで、凛は行動で誤魔化してしまうことにした。
「と……!」
細く柔らかな肢体が左腕にからみついて、士郎はあからさまに動揺した。
「どうだ、嬉しいか」
凛は悪戯っぽい笑みを浮かべてからかったが、その口調にはどこか上擦った気配が漂っていた。それは布地を通してすら感じられる、士郎の太さを増した腕のせいかもしれなかった。薔薇の香りに混じってわずかに嗅ぎとれる男の体臭が、凛を安心させも、落ち着かなくもさせる。
もっとも相手の方には、それに気づく余裕はなかった。顔を真っ赤にして腕を振り払おうとするのに必死だったのだ。
「こら、やめろ、人が見てる」
「セイバーしかいないわよ」
凛の言うとおり、小径は色とりどりの薔薇に仕切られて、前後にも(セイバーを除けば)人の姿はない。そのセイバーすらも、ちらとこちらは見たものの、後は興味なさ気に周囲を見回すばかりだ。
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凛の言葉にうろたえる士郎の様子は、見る方が可哀想なほどだった。
「いや、だから別にそういうわけじゃなくて、見とれてたとか見とれてなかったとかそういうことじゃなくって、ただ、遠坂がそういうのつけるの見たのが初めてだから珍しいっていうか、いや、珍しいっていっても似合ってないわけではなくて、むしろ必要以上に似合ってるけれども、やっぱり遠坂はスッピンの方が可愛いというか、化粧しちゃうのは……」
何をいってるのか自分でもわからないまま言葉を繰り出す士郎を見ていると、凛は心の奥底がぐっと持ち上がってくる感覚に捕われる。しかしこのままではこみ上げてくるものに突き動かされて、自分もなにを言い出すかわかったものではない。
「しょうがないなあ……」
そんなわけで、凛は行動で誤魔化してしまうことにした。
「と……!」
細く柔らかな肢体が左腕にからみついて、士郎はあからさまに動揺した。
「どうだ、嬉しいか」
凛は悪戯っぽい笑みを浮かべてからかったが、その口調にはどこか上擦った気配が漂っていた。それは布地を通してすら感じられる、士郎の太さを増した腕のせいかもしれなかった。薔薇の香りに混じってわずかに嗅ぎとれる男の体臭が、凛を安心させも、落ち着かなくもさせる。
もっとも相手の方には、それに気づく余裕はなかった。顔を真っ赤にして腕を振り払おうとするのに必死だったのだ。
「こら、やめろ、人が見てる」
「セイバーしかいないわよ」
凛の言うとおり、小径は色とりどりの薔薇に仕切られて、前後にも(セイバーを除けば)人の姿はない。そのセイバーすらも、ちらとこちらは見たものの、後は興味なさ気に周囲を見回すばかりだ。
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