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    <title>めにまね図書館</title>
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    <modified>2007-12-28T06:00:00Z</modified>
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 <title type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[猫と鈴（立ち読み版）§３　(了)]]></title>
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  <name>sakatsuki</name>
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 <modified>2007-12-28T06:00:00Z</modified>
 <issued>2007-12-28T06:00:00+09:00</issued>
 <content type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[「気に入ってもらえて良かった」<br />
「良かったなら良かったよ」<br />
　アホな会話をしてしまった。<br />
　してしまったついでに思い切って頭を胸に埋めてみた。我ながら大胆だなと思ったけど、顔を見つめ合っているのが恥ずかしくて、どこかに頭を埋めて隠したくなったのだ。<br />
　ぬるっとした感触が理樹の頬と首筋に伝わった。<br />
　来ヶ谷さんの胸の谷間ににじんでいた汗だ！　理樹の頬が耳が湿ってて信じられないくらい柔らかくて熱いものに包まれる。<br />
「んっ！」<br />
　唯湖がいつになく甲高い息を漏らした。<br />
「すごい、来ヶ谷さんの臭いでいっぱいだ」<br />
「そ、そうか……汗臭い？」<br />
「甘くていい臭いだよ、最高だ」<br />
　理樹は左右の乳房を掻き分けるようにぐりぐりと頭を押しつけた。そんなはずはないのだけれど、膨れた二つの乳球は理樹の頭より大きくて、頭ごと包んでしまうような気がした。<br />
「一応シャワーは浴びたのだが、バトルに少々手こずったのかもしれないな。理樹君も強くなった」<br />
「鍛えてるからね」<br />
「では、これからお姉さんがもう一段“男”を鍛えてあげよう」<br />
　理樹を胸に埋めたまま、唯湖は腰掛けた背中からベッドに倒れ込んだ。つられた理樹は唯湖の上に覆い被さるように乗りかかる。理樹の全体重が唯湖の上へ乗る。<br />
　ふかふかだ、と理樹は思った。ありあまる柔らかさで理樹を包み込んでいる膨らみだけではなく、身体全体が柔らかい。シーツの上に広がる長い髪の先まで柔らかいのではないかと思った。<br />
「来ヶ谷さん……」<br />
「こういう時くらいは、名前を呼ぶものさ、少年」<br />
　確かに名前を呼ばれないのは傷つくな、と納得した。つくづく気の回る人だと思う。<br />
「唯湖さん」<br />
「なんだい理樹君」<br />
　余裕綽々だ。<br />
「唯湖」<br />
「…………」<br />
　唯湖の顔が真っ赤になった。<br />
　勝った。<br />
「……意外と、恥ずかしいものだな」<br />
「僕はリズベスでもいいよ」<br />
「からかわないでくれ」<br />
「じゃあ唯湖さんでいこう。僕も恥ずかしいし」<br />
「うむ、じゃあそろそろ」<br />
「期待されても困るんだけど……」<br />
　理樹は残念だったけど来ヶ谷の上から身を起こし、スラックスに手をかけた。少し身体をねじった唯湖がニヤニヤと見ている。理樹は身が縮まるような気持ちを抱えながら、一方で胸をはだけた唯湖の肢体に新たな昂ぶりを感じずにはいられない。<br />
　脱ぎかけのシャツ、外れた黒いブラ。小さな黒いショーツが丸見えのスカートにニーソ。<br />
　なんというエロ魔神。<br />
　あ……ありのまま 今見てるもののことを話すぜ！ 　ワンダフルです、来ヶ谷さん。何を言っているのかわからないと思うけど、僕も何を見てるのかよくわかんない。頭がどうにかなりそうです。輸入盤ペントハウスとか情熱をもてあますとかそんなチャチなもんじゃ断じてない。もっとエロいものの片鱗を味わってます……。<br />
　理樹は時代遅れのテンプレを消化しつつ、プールの時間が待ちきれない小学生のように全力で服を脱ぎ捨てた。唯湖はギンギンに膨れあがった理樹のペニスをしばらく見つめて<br />
「立派なものだな」<br />
　と褒めてくれた。ホッとしている理樹を見ながらゆっくりと自分のショーツに手をかけ、ふと手を止めた。唯湖はからかうように、<br />
「自分で脱がしたいかね？」<br />
「……っていうか、唯湖さんは服脱がないの？」<br />
「着衣の方が理樹君がシチュエーション的に燃えるかと思ってね」<br />
「そういうのいいから。僕は、裸の唯湖さんが見たい」<br />
　唯湖が固まった。<br />
「理樹君はそういう所が、卑怯だ」<br />
　真っ赤な顔でつぶやいた。<br />
「僕は唯湖さんのそういう所が可愛いと思うよ」<br />
「今に見てろ」<br />
　と、唯湖は起き上がってはだけたシャツを脱いだ。几帳面に小さく畳むと上にブラを乗せる。<br />
「かならず主導権を取り返してやるからな」<br />
　ぶつぶつ言いながら服を脱いでいく唯湖はかなり可愛かった。<br />
<br />
　その時<br />
<br />
　――ちりん――<br />
<br />
　と、どこかで音がした。<br />
「あれ？」<br />
　理樹が声を上げると。<br />
「どうした？」<br />
　裸になったとたん急に内股になり腕で胸を隠した唯湖が不思議そうな顔をした。<br />
「今、何か聞こえなかった？」<br />
「いや……」<br />
　唯湖は首を振った。<br />
「正直、少々緊張していてね。周囲に気を払う余裕がなかった」<br />
「僕も、そうだったんだけど……」<br />
　一瞬で我に返されたような、そんな清冽な音だった。<br />
「気のせいかな……」<br />
「理樹君」<br />
　理樹が首を捻っていると、ベッドから少々棘を含んだ声が飛んできた。<br />
「私が意を決して服を脱いだというのに、キミの関心は着衣の時より薄らいだようだ。やはりキミはマニアックな性癖の持ち主のようだな」<br />
「そ、そんなことないよ」<br />
「ならばそれを証明してくれたまえ、態度で」<br />
　唯湖はちょっと拗ねているようだった。顔がゆでたように赤いのは怒っているせいか羞恥のせいかよくわからない。<br />
　こういう来ヶ谷さんが、もっとみんなにも知られればいいのに。<br />
　理樹の頭の中で『来ヶ谷さん』が。『唯湖さん』に変わる日はまだ遠そうだった。<br />
「あんまりロマンチックじゃなくてごめんね。あとたぶん下手だけどごめん」<br />
「ふむ……」<br />
　唯湖は少し機嫌を取り戻したようだった。<br />
「お姉さんは頑丈だ。理樹君に好きなようにされたくらいではびくともしないよ」<br />
　ゆっくり脚を開くと、唯湖の黒々とした翳りの下に赤い卑唇がしっかりと見えた。理樹はそそり立った赤黒い首根を唯湖に見せつけるように、堂々と歩いていった。<br />
<br />
<br />
<br />
【　第一章　了　】]]></content>
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</entry><entry>
 <title type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[猫と鈴（立ち読み版）§２]]></title>
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  <name>sakatsuki</name>
 </author>
 <modified>2007-12-27T13:00:00Z</modified>
 <issued>2007-12-27T13:00:00+09:00</issued>
 <content type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[　はかとない甘い声の意味に、理樹は唯湖の太ももにつけている頬が急に赤らんでいくのを感じた。<br />
「逃げ帰る必要はない、よね」<br />
「その通りだ」<br />
　振り仰ぐと、頭上の山脈が大きく上下していた。唯湖の呼吸が荒いのが手に取るようにわかる。<br />
　もちろん、自分もだ。<br />
　すごく、重いんだよな。<br />
　頭にのせられた乳房が歪んで沈む感触をしみじみと思い出す。こんなに大きなものが頭の上にのっていればそれは重いだろう。<br />
　さわったら、どんな感じだろう。<br />
「理樹君……」<br />
「ご、ごめんなさい！」<br />
　理樹はいつのまにかのばしかけていた腕を慌てて下げた。唯湖は軽く咳払いすると、<br />
「いや、そ、それはかまわんのだが……姿勢が、苦しいのではないかと思ってな」<br />
「えっ、と、とくに」<br />
「そうか……ならいいんだが」<br />
　いいんだ。<br />
　あらためて下から手をのばすと、シャツを通して掌の先が重いものをゆさり、と持ち上げた。理樹の腕に電撃が走る。思ったより固い。なぜだろうと力を入れると意に反して軽く指先が滑る。<br />
「ブラをつけているからな」<br />
「なるほど」<br />
　なにがなるほどなのかわからなかったが、ジョーゼットの布地から透けるボールを突き上げるように軽く揺すぶってみた。なんという重量感。ウエイトトレーニングが出来そうだ。<br />
　我を忘れておっぱいリフティングを繰り返したあげく、理樹はようやく唯湖の表情に気づいた。<br />
「えっと、なに」<br />
「いや、なんだがな……」<br />
　らしくもなく言いよどむ姿が新鮮だった。<br />
「理樹君の、スラックスがな。苦しそうだなと」<br />
　いきり立ったものを指された理樹は慌てて股間を押さえて丸くなる。その拍子に頭が唯湖の太ももから外れ、ベッドの下に転がり落ちた。<br />
「おい、理樹君」<br />
「ててててっ……」<br />
　唯湖は苦笑しながら理樹を引き上げた。<br />
「大丈夫かね、性的な意味で」<br />
「大丈夫、だと思う」<br />
　理樹は股間を片手で隠しつつ内股で立ち上がった。<br />
「やっぱりしょうがないなあ理樹君は」<br />
　唯湖が苦笑する。<br />
「だって急に変なこと言うから」<br />
「変なことをしていたのはお互い様だろう、ほら」<br />
　唯湖はもともと上を開けたままのシャツのボタンを外した。シフォンジョーゼットの布地がはらりと落ちると、むっちりとした肉塊がフルカップの黒いブラジャーの合間からはじけ飛びそうだった。これは反則だ。イエローカードだ。二つあるからレッドカードで退場しちゃえばいいよ。<br />
　単純計算で外回り百十五センチあるということになる。膨らんだ球の表面をなぞったらどれだけになるのだろう。<br />
　おまけに妙に白い肌にはうっすらと血管が浮いている。<br />
　正直、たまりません。<br />
　理樹は素直に思った。今この場で唯湖に何もしないでいられるのは筋肉旋風中の真人くらいに違いない。謹厳実直な謙吾だって躊躇うくらいはするだろう。<br />
　もちろん理樹に躊躇う理由はない。だって二人は恋人同士だし。「ほら」って言ってるし。それはつまり、そういうことな訳で。<br />
　疑問はいつの間にか霞の彼方に消えていた。<br />
「理樹君、見るのは構わんがお互い公平にいこうじゃないか」<br />
「えっ、何か」<br />
　夢遊病のようにまた手を伸ばしかけていた理樹ははじかれたように大きく腕を回した。<br />
「キミが私の胸を見たいように、私もキミの隠しているものが見たいな」<br />
「それは……脱げということ？」<br />
「どうせこれから脱ぐんだろう？　なんなら私が脱がしてやろうか。うん、その方が私らしいかもしれないな」<br />
「いえ、いいです！　脱ぎます！　脱がさせてください！」<br />
　いつのまにか敬語になりながら理樹は慌ててシャツを脱いだ。上半身裸になったところで様子をうかがうと、唯湖は不満そうな顔をして、<br />
「わかっていると思うが――」<br />
「そ、それはおいおいということで……」<br />
「ま、いいだろう。後々の楽しみも大事だからな」<br />
　おいで、と手招きされて理樹はおそるおそる純白の双球に手を伸ばし直した。はち切れそうな黒いブラは、理樹の目から見ても相当凝ったデザインで、高級品か外国製であることをうかがわせる。触れるとレース編みの複雑な刺繍越しに触れた重さをずしりと感じ取った。<br />
「外していい？」<br />
「もちろんだとも」<br />
　驚くほど大きいブラなのに、フロントホックだった。理樹は胸の谷間に差し込む指を震わせながら、<br />
「さすが来ヶ谷さん、用意周到だね」<br />
　と強がって見せた。<br />
「乙女心と言ってもらいたいね」<br />
「うん、わかってる。すごく、嬉しいよ」<br />
　思い切って膨らみの谷間にぐっと指を入れると、ホックはぱちんと小さな音を立ててはじけ飛んだ。<br />
　ブルン！　と音がした気がした。巨大なブラでさえ包み切れていなかったビーチボールのような乳球が左右にはじけ飛んだ。<br />
「うはっ」<br />
　理樹は一瞬乳房にはじき飛ばされるのではないかと錯覚して身体を退いた。もの凄い迫力だった。<br />
「これが……来ヶ谷さんの、おっぱい」<br />
　頭に乗せられたり、背中に押しつけられたりしていた巨大な質量の正体に理樹は陶然とした。薄く汗ばんだ白くて柔らかそうな丘陵が重力に逆らうようにぐっと盛り上がり、先端近くから急にＲを小さくすると同時に薄く乳輪が色付いていく。それが紅葉のように乳首にいくに従ってしっかりと色がのり、乳首の先はぷくりと膨らみつつもしっかりした存在感を見せていた。<br />
　ぶっちゃけ、すごい。<br />
　なんだかよくわからないけどごめんなさい。<br />
　とりあえず闇雲に謝ってみた。<br />
　来ヶ谷さんは美人でゴージャスな割にはもてると言うより恐れられてる感じだけど、きっと隠れファンは沢山いる。そんなみんなを差し置いちゃっていいんだろうか。<br />
　アンバランス寸前の爆乳と乳輪のバランスは正直よくわからなかった。大きすぎるということはないけど、房のヘタみたいなおまけという感じでもない。きっとナイスバランスなんだろうと判定してみた。<br />
「どうだ、理樹君」<br />
「すごいね」]]></content>
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 <title type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[猫と鈴（立ち読み版）§１]]></title>
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  <name>sakatsuki</name>
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 <modified>2007-12-26T15:00:00Z</modified>
 <issued>2007-12-26T15:00:00+09:00</issued>
 <content type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[　要領のいい人はいるものだ、と直枝理樹は思った。女子寮は夜間の男子入寮については厳しいものの、昼間はある程度の自由がある。そして旧館にある来ヶ谷唯湖の部屋と来たら、女子寮の租界とも言われる治外法権の土地で誰もが近寄ることさえ恐れるらしい。<br />
　つまり、フリーパス。<br />
「そんなわけで存分に楽しんでくれたまえ」<br />
「ナレーションを受けて会話しないでよ！」<br />
　ランキングバトルに敗北した理樹は精一杯の抗議をした。ベッドに座る唯湖の太ももの上から。<br />
「なんだ、そんなささいなことが気になるのか。総受け君は心配性だなあ。」<br />
　はっはっはと辺りはばかることのない大声で、唯湖は笑った。とはいっても理樹からは笑顔の下半分は見えなかった。白く透けるシャツに包まれた公称Ｂ九〇のＦがゆさゆさと揺れていたので。<br />
　本当はゆさゆさというよりどたぷ〜んという感じだったのでＧかＨはあるんじゃないかと理樹は思ったけど自重した。空気の読める子理樹。<br />
「なんならキミが揉んでＨカップに育ててくれてもいいんだぞ」<br />
「だからモノローグに入ってこないでってば！」<br />
　つまりＧなんだなと理樹は納得した。謎の解明は使命の一つでもあるので今日はなかなかの働きをしたといえる。<br />
「そういうわけで、僕を帰してよ。クドが待ってるんだ」<br />
「そう言う総受け君もナレーションから切り返してきたじゃないか、つれないな。キミは敗者のしきたりというのがまだよくわかってないらしい。昔から戦争に負けた側は狼藉略奪の限りを尽くされて陵辱されるというのが世の習いだ」<br />
「歴史はともかく、こんな恥ずかしいこと……」<br />
「そうか？　ほ〜れほれ」<br />
　唯湖は膝にのせた理樹の頭をわしわしとなでた。そんな風にされると、理樹も自分が猫になったような気がしてくる。横たわるベッドのほどよい寝心地もあって、心地よさに気が遠くなりそうだ。<br />
「そういえば総受け君は|ロリっ子御用達君《クドリャフカ君》とおつきあいしているのだな」<br />
　理樹をじゃらしながら唯湖が尋ねた。<br />
「うん。今日もこれから買い物に出かけるんだ。だから」<br />
　はう・まーっち・まねーなのですよ、というクドの可愛い声が理樹の頭の中で聞こえた。毎日一緒にいても、やはりお出かけは胸がドキドキする。ここでちょっぴりお茶目な姉御肌に玩ばれている場合じゃないのである。<br />
「それなんだが……」<br />
　唯湖はらしくもなく、曖昧で|無聊《ぶりょう》に苦しむような表情を浮かべた。<br />
「なぜだかキミがクドリャフカ君といるのを見ると妙に腹立たしい……気がする。そもそも君たちはいつからつきあっているのかね」<br />
「それは……」<br />
　デートの帰りにクドが「靴ひもが解けてる」っていって、僕がかがんで――。<br />
<br />
　あれ？<br />
<br />
　唯湖の言葉が耳に届いたとたん、理樹の頭の中に突然“？”が浮かんだ。<br />
　そもそもどうして僕はクドと出かけたんだっけ？<br />
　忘れられないはずの確かな思い出が、唯湖に聞かれただけで泡のように消えていく。<br />
（記憶なんてあやふやなんだよ）<br />
　どこかで誰かの声がした。<br />
（あたしがちょっと言っただけで、すぐにひっくり返ってしまうくらいに）<br />
　そんな訳はない。僕は、そんな挑発は乗り越えてきたはずだ。<br />
　挑発？　誰の？<br />
　急にうろんな気持ちになった理樹の気持ちを見透かしたように、唯湖は<br />
「なぁ、少年も気づいたろう？　何日前からなのかわからないが、キミの記憶同様、みんなの記憶も実にあいまいだ。実は私自身、なにが現実で何が妄想なのかいささか自信がなくてね。そんな時私は思考より自分の感性を信用することにしているんだ。それによると――」<br />
　唯湖は太ももの上にのせた理樹の頬をむにむにと押した。<br />
「こうしていることはどうやら私にとってとても自然なことらしい。控えめに言って、歯磨きのような習慣であったとしか思えないのだよ。ここ数日ずっとこうしたかったし、キミの頭がここにあると落ち着くのではないかと予想はしていたが、これほどとは思わなかった」<br />
　唯湖の掌はまるで懐かしむかのように理樹の顔をなぞる。理樹はなんだか背中がゾクゾクっとした。やばい、なんだか僕もそんな気がしてきた。確かにこの太ももの感触は初めての気がしない。<br />
「でも何かが違う気がする」<br />
「それはズバリ、場所だな」<br />
　唯湖は断言した。<br />
「私のおぼろげなイメージでは理樹くんを支えていた太ももの下はもっと固い感触だ。たぶん放送室の椅子なんじゃないかと睨んでいる。つまり、私たちはいつも放送室を使って乳繰り合っていたというわけだ」<br />
「乳繰りあってなんていないよ！　ご飯を食べたり、耳掃除を……」<br />
　あっ、と理樹は唯湖を見上げた。唯湖の美々しい顔がにんまりとした……はずだ。相変わらず口元はＧカップ山脈の彼方だったので。<br />
「どうやら私だけの妄想ではなかったようだな」<br />
「そんな気がする」<br />
「そうか……」<br />
　満足するのかと思いきや、なぜか唯湖は気まずそうに天に顔を背けた。<br />
「どうしたの？」<br />
　問いかけたとたん、唯湖へのプレゼントに悩んだことや一緒に見た花火の記憶が、理樹の中で逆回しのフィルムのようにわき上がった。<br />
「そうだ、僕は来ヶ谷さんとつきあってたんだ……」<br />
　どうしてクドとつきあっているなんて思っていたのだろう？　僕はあんなに来ヶ谷さんにアプローチしてたのに。<br />
　アプローチして……返事をもらって……その後どうなったんだっけ。<br />
　ぼんやりとした雨の風景しか浮かばない。<br />
「そんなことはどうでもいいだろう」<br />
　唯湖が膝上の理樹から顔を逸らしたままつぶやく。<br />
「それよりキミは、どうして私が放送室を避けたと思う？」<br />
「そうだね……」<br />
　記憶を取り戻させたいなら、出来るだけ印象の強いものを揃えるのが常識かもしれない。<br />
「でも、この部屋も印象深いけどね」<br />
　目が覚めたら夜の女子寮だったという衝撃のシチュエーションは忘れようがない。<br />
「あの時キミはまだおねーさんに告白する前で、起きるなり一目散に逃げ帰ったなあ」<br />
「そうだっけ」<br />
　女子寮の玄関に靴を取りに行くという壮絶なミッションがあった気がしますけど。<br />
「今は、恋人同士だ」]]></content>
 <id>http://menimane.com/blog/:1:1067</id>
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 <title type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[長門有希の観察 §32(HP編13）]]></title>
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  <name>sakatsuki</name>
 </author>
 <modified>2007-07-14T14:00:00Z</modified>
 <issued>2007-07-14T14:00:00+09:00</issued>
 <content type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[「あんたは、なんか持ってる。きっとあんたがあたしにツキを運んできたんだわ」<br />
「そういやさっき『ずっとツイてない人生』とか言ってたな」<br />
「あんたに会ってから、あたしの人生はギアがかかり始めたの。今まで変えようとして空回って何も変わらなかった世界が、急にかみ合いだして、どんどん面白いことが増えてきて、毎日が前に進んでく感じなの」<br />
　それはお前の心がけの問題なんだ。あの閉鎖空間の中で二人が出した結論が今お前の背中を押してるだけなんだ。俺はちょいと進む向きを変えてやったのに過ぎないのさ。それを全部俺の功績にされちまうのはこそばゆいね。<br />
　ただ、それを口にするわけにもいかない。<br />
「多少は役に立っていたんなら嬉しいな」<br />
「もちろん多少よ。あんまり大きな顔されても困るわ。でも幸運の女神には後ろ髪がないって言うじゃない。あんたはざん切り頭でろくに前髪もないんだから、こうやってしっかり腕を捕まえておく必要があるの」<br />
　俺としてもその柔らかい谷間に抱え込まれてることに悪い気分はしないね。<br />
「だからあんたはずっと私の側にいなさい。損はさせないわ。贔屓にしてあげるって約束したしね」<br />
「俺も約束したっけな」<br />
「？　なんだっけ」<br />
「次は派手にいかせてやるってな」<br />
「期待してるって答えたんだっけ？」<br />
　ああ、その通りさ。]]></content>
 <id>http://menimane.com/blog/:1:873</id>
</entry><entry>
 <title type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[長門有希の観察 §31(HP編12）]]></title>
 <link rel="alternate" type="text/html" href="http://menimane.com/blog/index.php?itemid=872" />
 <author>
  <name>sakatsuki</name>
 </author>
 <modified>2007-07-11T14:38:08Z</modified>
 <issued>2007-07-11T14:38:08+09:00</issued>
 <content type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[　春夏秋冬を一周したかと思えるほど長い数秒に俺が耐えきれなくなる寸前、バスルームの上の方から<br />
（条件がある）<br />
　と、声が聞こえた。<br />
<br />
　俺が手招きをすると、待ちかねていたピンク色のバンビが挑戦という鹿煎餅を求めて近寄ってきた。指さしてガラス張りのドアの側に回らせる。<br />
「準備できたの？」<br />
「ああ、そちらのノブに手を掛けてくれ」<br />
「こう？」<br />
　と、ハルヒは外側から白い取っ手に手を掛けた。こちら側の取っ手とガラス扉を挟んで対称になるような位置にある。俺は息を吸って。<br />
「じゃあいくぞ、一、二、三」<br />
　かけ声と同時に俺は反対側から取っ手を握りしめた。<br />
<br />
　どん！<br />
<br />
　という響きが自分の内側から聞こえた。<br />
　――気がしたが、構わず俺は力任せにドアを引っ張った。引き込まれて軽くよろけたハルヒがパウダールームに転げ込んでくる。<br />
　ハルヒは軽く蹈鞴を踏んだものの、俺の胸に飛び込んでくる前に軽く体制を立て直してしまった。朝比奈さんなら小鳥の雛のように懐に収まるだろうに、ろくに役得も与えてくれない奴だな。姿勢を戻したハルヒは俺を見上げ<br />
「なによ、一緒に入りたいの？」<br />
　と、ちょっと不機嫌そうに声を上げた。うっすら頬が赤いのは声とは裏腹だけどな。視線は俺の向こうに見える浴室に奪われたままだ。なみなみと湯をたたえたでかい浴槽が洒落た黒タイルの奥に収まっているのがガラスの仕切り越しに見える。<br />
「手品は終わりだ。もういいぜ」<br />
「なによ」<br />
　俺は首をすくめて、扉を引き直した。解放で固定する。<br />
「もう向こうに戻っても違和感はないはずさ」<br />
「何言ってんのあんた？」<br />
「いいから出てみろよ」<br />
　バンビからドナルド・ダックに変身した女が不機嫌さ50％、好奇心20％といった感じで外に出る。残り30％は割とどうでも良いんだと思うね、本当は。俺の小芝居につきあってやってるという感じなんだろうさ。しかし<br />
「えっ、なんで？」<br />
　後に続いて出た俺も心中で驚きを押し殺す。いつかの吹雪の館によく似た人工的な空気こそ消えないものの、視線の圧迫感の方は見事に雲散霧消していた。これなら新築の一流ホテルで通るだろう。行った経験は小学校の頃まで遡るとはいえ。<br />
「気圧の問題なんだろうな」<br />
　俺は古泉の口調を頭の中で再現しながら、口から出任せを語り始めた。あいつほど流暢ってわけにはいかないが、そこは成す仲同士見逃してもらいたいね。<br />
「こういうところは空調が行き過ぎて部屋と外で気圧に微妙な差が出るもんさ。そいつが違和感の正体だ。風呂場は独立して換気してるからな。扉を開けると調整される。外窓開けても良いんだろうがこの部屋にはないからな」<br />
「へえ……」<br />
　ハルヒは掌を見つめて少し首をかしげた。<br />
「どうした」<br />
「入るときに少しピリッとしたから、静電気かしら」<br />
　ノブは大理石風の合成樹脂だが俺は頷いておいた。<br />
「それもエアコンの効きすぎのせいかもな。乾燥してるんだろ」<br />
「そうね」」<br />
　特に異論もなかったのか、パウダールームと外側を行ったり来たりしながらきょろきょろと確認する。さして期待もしてなかった宝くじで五千円くらい当たったような顔だな。嬉しいってほどの額じゃないが足しにならないこともないという感じだ。<br />
「こういう雑学ネタは古泉君の専門だと思ってたけど……」<br />
　いなきゃいないで代役を立てざるを得ないからな。飽きっぽい観客のせいで舞台裏ではみんな大騒ぎしてるんだ。最近は俺までクレーマーの一派に数えられることが多くて遺憾だが、希望としては舞台袖か関係者席でのんびり見ていたいというのが本音だね。<br />
「……あんたって変なところで外連味出すとこあるわよね。普段使いっぱなのに突然仕切り出したり、急に投手やりたいって言ってみたり」<br />
「美味しいところを逃さないと言ってほしいね」<br />
「ホントにそうかも」<br />
　と、妙に素直な返事が来たので俺は思わずハルヒを見返した。ありうべからずというか、何か悪いものでも喰ったのか、ハルヒの瞳は俺を見つめて潤んでるように見えた。腕に細い腕がからみついて寄せられる。]]></content>
 <id>http://menimane.com/blog/:1:872</id>
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 <title type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[長門有希の観察 §30(HP編11）]]></title>
 <link rel="alternate" type="text/html" href="http://menimane.com/blog/index.php?itemid=851" />
 <author>
  <name>sakatsuki</name>
 </author>
 <modified>2007-06-22T23:10:05Z</modified>
 <issued>2007-06-22T23:10:05+09:00</issued>
 <content type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[（今、情報統合思念体の全てがあなたたちを注目している）<br />
「それは聞いた」<br />
（そうではない）<br />
　長門は俺にとんでもないことを切り出した。<br />
（今この瞬間、この世界に新たな大規模情報爆発が始まろうとしている）<br />
「なんだって」<br />
　それは、あの……<br />
（――それは歴史的瞬間。だから全宇宙の統合思念体がこの瞬間を目撃するために集まっている）<br />
「この部屋にか」<br />
（この部屋に）<br />
<br />
　この圧迫感はそれが理由だったのか。<br />
<br />
　全宇宙の視線がこの一部屋に集中している。<br />
　そんな馬鹿な、というだけの度胸はもはや俺にない。たかだか口五月蠅い女一人をラブホに連れ込んだだけでなんて騒ぎだ。俺たちはいつの間にか絶滅動物の交配を見守るようなシチュエーションのまっただ中に放り込まれていたのか。<br />
　もっとも、だとしたらこの視線は逆に少なすぎると言えるだろう。全宇宙がどの程度だか知らないが、情報だけで地球を圧壊させるくらいのエネルギー量はあるはずだ。体を張って気を遣っている誰かが間にいるとしか思えない。<br />
「……それは迷惑掛けてるな」<br />
（いい）<br />
　返事は例によって簡潔だった。<br />
（私たちの仲）<br />
「俺たちの仲か、そうだな」<br />
　どんな仲なんだろうな。俺と長門は。<br />
　長門はそんな胡乱な問いには答えず、代わりに<br />
（涼宮ハルヒの中で、あなたの愛情に対する信頼が生まれつつある）<br />
　声色に微妙な色彩を乗せた。<br />
（彼女にとってそれは人生の基盤を揺るがすこと。自己判断の無謬性の下にあなたへの信頼を敷こうとしている）<br />
　それはまた、私＝私たちのループに戻ることとは違うのか？<br />
（違う。自意識の未分化ではなく、自己の基盤としてのあなたの存在を認めると言うこと。涼宮ハルヒを情報の大砲とするならば、その向きを決める砲台があなた。あなたの望む向きに涼宮ハルヒのエネルギーは進む）<br />
　要するに縁の下の苦労は俺に押しつけて、自分は勝手に飛び出そうってことだろ、それは。<br />
　長門は珍しく躊躇するような間を開けて<br />
（そうかもしれない）<br />
　と言った。おいおい、認めちまうのかよ。<br />
（でもそれは今までと同じ。ＳＯＳ団はあなたの暗黙の認証の元に動いてきた。これからはそれがあなたたち二人の間にあると認め合うことになるだけ）<br />
　それは良いことなんだろうな？<br />
（あなたというプリズムによって、涼宮ハルヒの情報は多彩に屈折し変化していくと予想される。それは統合思念体にとって待ち望んでいた変化）<br />
「統合思念体はこの際おいておこう」<br />
　言いたいことは山ほどあるが、先に確認しておきたいことがある。<br />
「それは、俺たちにとって、良いことなんだろうな」<br />
　ＳＯＳ団にとって、長門、おまえにとってどうなんだ。<br />
　長門の声は途切れた。俺は辛抱強く待つ。ガラスの向こうにいるハルヒが何をしているんだという顔で見ている。宇宙も世界のも知ったことじゃないな。俺もそうさ。話が大きすぎて現実感がありゃしない。俺にわかるのはＳＯＳ団とその周囲くらいまでさ。だからおまえの答えが聞きたいんだ。<br />
　何もしない俺にいらだったハルヒが、憤然と立ち上がってこちらに来ようかという瞬間、声はようやく戻ってきた。<br />
（良いこと）<br />
　長門は請け負ってくれた。<br />
（――でも、少し寂しい）<br />
　今度は俺が黙る番だった。<br />
（これであなたと涼宮ハルヒの関係は深く固定される。それは私たちの幼年期の終わり）<br />
　ママゴトみたいな仲良しグループＳＯＳ団の時代は終わるってわけか。<br />
（私はそれを楽しんでいたと思う）<br />
　俺も気に入っていたさ。できれば永遠にそこに留まりたかったくらいだ。でも、そうするには少々そこの頓狂な女のことを気に入りすぎていたようだ。<br />
　楽しいだけのＳＯＳ団なら、長門の作ったあの世界でも良かったかもしれない。あるいはハルヒの滅ぼした五十二の世界の中にも存在したのかもしれない。だがそれだけじゃもうもの足りなかったんだ。俺もハルヒも飽きっぽすぎる性格のようだからな。<br />
　ガンガンとガラスの向こうから拳が飛んできた。まさかこの敷居をたたき割るつもりじゃないだろうな。騒音に混じって曇った声が聞こえる。<br />
「ちょっとキョン！　なにしてんのよ。早く始めなさい。さもないと……」<br />
「うるせぇ！」<br />
　俺はガラスを殴り返した。こっちは大事な話をしてるんだ。<br />
「あっち行って見てろ！」<br />
　驚いたことにハルヒは憤然とながらベッドまで引き下がった。いつからこんなに聞き分けが良くなったんだ？　これも信頼とやらかね。単なる開幕前の期待感からかもしれんが。<br />
（彼女にとって、あなたが手品に成功するかは問題ではない）<br />
「失敗したらしたで罰ゲームのお楽しみがあるからな」<br />
（あなたの存在自体が今の望み。同じ空間を分け合って、触れ合うこと。それだけで満たされる。今のは寂しくなったから触れにきただけ）<br />
「報告しなくったっていい。逐一相手の気持ちがわかるっていうのはフェアじゃないからな……なあ、長門」<br />
（それは難しい）<br />
　声は先回りして答えたが、俺は言葉をかぶせた。<br />
「統合思念体に、この部屋の観察をやめるように言えないか。連中がほしいのはこれからの結果だろ。炭素系有機生命体の生態に興味がある訳じゃない」<br />
　希少動物だって科学者が二十四時間睨んでたら不妊になるってもんだ。モルモット扱いは耐えるにしても、生板ショーまがいのプライベートを公開する必要があるとは思えない。自慢できるようなテクニックもないしな。<br />
]]></content>
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 <title type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[長門有希の観察 §29(HP編10)]]></title>
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 <modified>2007-05-03T04:38:01Z</modified>
 <issued>2007-05-03T04:38:01+09:00</issued>
 <content type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[　何秒か間の悪い空白が生まれた。しかし辛抱強く待つと。<br />
（私の仕事はあなたたちの観察）<br />
「それは知ってる。悪いとは言わないさ。だが、これはやり過ぎだろう」<br />
　ホテルの名前はＴＡＮＧＯ・Ａ。並び替えればＮＡＧＡＴＯ。簡単なアナグラムだ。ハルヒがネットで決めた時から介入には気付いていたさ。長門が自分のテリトリーで安心して見届けたいという気持ちは解るから黙ってもいた。ここならボッタに遭う心配もないしな。<br />
　しかしこの部屋の濃密な気配は見届けるなんて生やさしいもんじゃない。天井や壁、床。部屋中から視線を感じる。この感覚は先日と似ている。俺とハルヒと長門が同衾した田舎屋の寝室で、長門の視線に耐えながら俺とハルヒが事に至ったあの空間と。<br />
　ただ視線の量が段違いだ。目の前に長門がいた時より悪い。これじゃまるで長門の胎内にいるような感じだ。四方から濃密な気配を感じて息が詰まりそうになる。]]></content>
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 <title type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[長門有希の観察 §28(HP編9)]]></title>
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 <modified>2007-04-22T20:40:19Z</modified>
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 <content type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[　仕方ない。<br />
　俺はハルヒの指先を外して立ち上がると、いつになく不安げな瞳を揺らしている小天使に向かって手を振った。<br />
「わかった。ちょっとした手品をしてやろう」<br />
「なによ」<br />
　今までの儚げな天使の瞳が、瞬く間に小悪魔のそれに変わる。なんであれ挑戦は受けて立つというのがこいつのＯＳには組み込まれているらしい。<br />
「つまんない手品だったらここの割り勘分は払わないわよ」<br />
　なんと払う気があったのか。コンドームといい、この種のことに関してハルヒはとことん平等を貫くつもりらしい。なんとも懐に心強い話だ。<br />
「心強いかどうかはネタを見せてから考えた方がいいわよ」<br />
　ハルヒがいつもの挑発的な声色に戻ってニンマリと笑う。もうこれだけで半分目的は達したようなものだが、根本的な解決にはなっていない。<br />
「ああ、その前にだ、絶対に嘘はつくなよ。それと感じた通りのことをそのまま話すんだ。じゃないと賭が成立しないからな」<br />
「いいけど、何をしようっていうの」<br />
　ハルヒは待ちきれないように前のめりに俺を見上げた。表情には浅草の演芸場に通い詰める大正の子供みたいな無邪気な期待感があふれてる。こいつは生まれる時代を間違ったのかもな。<br />
「今から俺はあそこのバスルームに行く」<br />
　と、俺はガラス張りのモデルルームじみた空間を指さした。<br />
「戻ってきたら、ここの変な空気は一掃されてるはずさ」<br />
「なにそれ」<br />
　と、ハルヒはいぶかしげに口を尖らせた。<br />
「だから、嘘をつかれたりしたら始まらないって言ったんだ。お前の主観に寄るところ大だからな」<br />
「あんたが、あのバスルームの中で何かするわけね」<br />
「まあそんなところだ」<br />
「いいわ、行って」<br />
　ルールを飲み込んだハルヒが追い立てるように手を振った。俺は一張羅のホワイトフランネルのジャケットを脱いでソファーに投げながらガラス戸を押し入った。付属するパウダールームから振り返ってハルヒの方を見る。<br />
「声、聞こえるか？」<br />
「？」<br />
　届かなかったらしく、ガラスの向こうにハルヒが近寄ってきた。ガラス一枚を挟んでお互いの顔を見つめ合う。コンコンとガラスを叩いて合図してみた。<br />
「聞こえるか？」<br />
「多少ね」<br />
　桜貝のような唇から小さな声が聞こえた。良いだろう。俺は手振りでハルヒにベッドまで戻るよう指示した。ハルヒがタネを見破ってやるぞという態度満々で下がっていく。さてと。<br />
　俺はベッドに座り直したハルヒを確認すると、そのままハルヒに語りかけるように口を開いた。<br />
「仮説の実行は俺に任せてくれるんじゃなかったのか、長門」　]]></content>
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 <title type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[長門有希の観察 §27(HP編8)]]></title>
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 <modified>2007-03-21T22:11:50Z</modified>
 <issued>2007-03-21T22:11:50+09:00</issued>
 <content type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[「なんか綺麗すぎて落ち着かないわ」<br />
　俺の気持ちを寄り添ったままのハルヒが代弁した。白熱灯色の間接照明がむらなく配光された室内は塵一つなく掃除されていて、清潔というよりはどこか病院めいた印象を受ける。ハルヒの不安も諾なるかだ。<br />
「ネットで見たときは良さそうだったんだけど……」<br />
　確かに部室のノートパソコンに出せる程度の写真じゃ何もかも解るってわけにはいかない。ましてや初心者の俺たちには現物との差を埋めるだけのものがない。無駄な知識だけなら悪魔の辞典が書けそうなほど持ってるハルヒといえど、女にありがちな耳年増ってタイプじゃないからな。今回は知識と体験の間に流れる誤差という川は無理に渡らずに、橋の建築を今後の課題として棚上げしとくべきポイントなんだろう。<br />
「まあ、するためだけの部屋だからな、やっぱり違和感はあるな」<br />
　俺は自分を励ますように努めてもっともらしい台詞を言ってみた。<br />
「こんなんならいつもの部屋の方がいいわね。臭くてもあんたの匂いがするし、狭くて落ち着くし」<br />
　天使の容姿に似合わぬ語彙しか持たない女は失礼千万なことを口にしていたが、こういう時でなければすかさずゲーム機に飛びついてモニターを立ち上げつつ、口にポテチの一つも咥えて左手だけでカラオケに三曲はリクエストを放り込んでいるはずだ。<br />
　それが俺の腕を捕らえたまま半歩も離れようとしないのは、昼間の余韻ではなく、いつもは怪電波を受信してる見えないアンテナで不自然さを検知していたからだろう。<br />
「まあ、これも経験だ」<br />
　俺は啖呵を切るように声を上げ、右手奥に阿保らしいほどの存在感を見せつけているベッドに歩み寄った。試しに腰掛けてみるとサテンのリネンは下ろしたてを通り越してさっき作りました的なほど真新しかったが、そういう一つ一つが微妙な違和感を生んでいるのだろうと思い至った。新築の匂いっていうよりセットみたいだもんな、これじゃあ。<br />
「まあ汚いよりは綺麗な方がマシだろう」<br />
「それはそうだけど」<br />
　いつも俺の襟首を掴んで引きずって歩く女が、俺の腕をちょこんと掴んだまま後について横座りしているというのもなかなかお目にかかれない光景なのだが、俺もそのサプライズイベントを楽しむ余裕がない。]]></content>
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 <title type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[長門有希の観察 §26(HP編7)]]></title>
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 <modified>2007-03-11T20:25:29Z</modified>
 <issued>2007-03-11T20:25:29+09:00</issued>
 <content type="text/html" mode="escaped"><![CDATA[　しかし女同士の間にはまた違う理屈があるらしかった。<br />
「ずっとツイてない人生だなと思ってましたけど」<br />
　左腕を抱えた女がらしからぬ台詞を紡ぐのを、俺は間抜け面で見つめていたろう。<br />
「今まで貸した分は返してもらわなきゃね」<br />
「ええ」<br />
　お馴染みの過電流気味な笑顔を作り上げた青虫は蝶に向かってもう一度腕を伸ばすと、二人は掌を合わせて、ぱんっと音を立てた。<br />
　それはなんだか外れていたパズルのピースが嵌るような音で、俺はもしかして取り返しのつかない画を作り出してしまったのかも知れないとふと思った。だからといってパズルを放り投げてバラバラにしようにも、シートはとっくにコーティングされてピクリとも動かないときてる。<br />
　それに出来上がった画を俺は割と気に入ってるんで描いた作者を恨む気にはなれない。一言釘は刺しておこうかなと思ってるけどな。ことに次第に増える人垣を見るに、ラブホテルの玄関で立ち話をするカップル達の世間体については入念に説明しておく必要があると思ったさ。<br />
<br />
『タンゴ・アルファ』のリビングはネットの画像通り、シティホテルのスイートのようなシックさだった。目立つカラオケの機械やゲーム機がなければ一見本当に区別がつかない感じだ。とはいえ、振り向けば見える素通しの浴室はやはりここが普通の場所ではないことを感じさせて俺たちを緊張させた。]]></content>
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