めにまね
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Fate/stay night

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PDF:七番目の橋を渡る時

PDFでアップしました。

こちらからどうぞ。(4.6M)

【DATA】
発行日  :2004年8月14日初版 2004年12月29日二版
ページ数 :148P
収録作品 :七番目の橋を渡る時(作:さかつき)
     :円卓の寿司(作:文月十日 原案:さかつき)
コメント :その後2年続く『The River』シリーズの第一作になります。『月姫』メンバーvs衛宮士郎・ライダーが冬木を駆け回るお話です。今思うともう少し桜を活躍させたかったなあ。

倫敦指令X3 §8

 静かにゲストルームに入ってきたセイバーは、険しい表情のままベッドに横たわる士郎を認めて足を止めた。その横をすり抜けて、一緒に入ってきた自転車メカ翡翠が額に汗を浮かべて寝苦しそうにしている士郎へと向かう。
 士郎の『戦闘論理』は、士郎の身体が「戦闘状態に入った」と認識した瞬間から発動する。従ってあの瞬間、士郎の中で『戦闘論理』が発動したことにはなんらかの意味があるのだ。
 リージェンツ・パークの地下ゲートで凜に忠告したのはそういうことだ。本当に必要なときは、本人の意志と関わりなく『正解』を得てしまう奇怪な直感。
 その『正解』を積み上げた先には固有結界──『世界』を修正して『正解』を作りだしてしまう我田引水の極致たる異形の論理ルール──が存在する。
 やがて固有結界が使いこなせるようになったとき、衛宮士郎は戦闘に於いて究極の存在となるだろう。

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倫敦指令X3 §7

「ふん、どうやら庶民の土地は皆死んだようね」
 建物の割には小じんまりとまとまった書斎で、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトはカシミヤの部屋着を羽織って、次々と入ってくる伝令から報告を受けていた。今度のような異常事態には、古風な家財を揃えた邸宅とたっぷりの使用人を抱える恩恵を、強烈なまでに受け取ることができた。
 電化・ガス製品こそ不調だったが、ランプや蝋燭には事欠かず、調理にしても釜や暖炉を復活させることであっさり解決した。乗馬用の馬たちは車代わりに長時間労働を強いられるのを若干厭う気配があったし、長期に渡れば薪も尽きてくるだろうが、当面は致命的なほど困ることはなかった。なにより──。
「やはり魔術ができないというのは可哀相なものね」

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倫敦指令X3 §6

「王よ!」
 獣脂の焦げた臭いのする薄暗い明かりが、騎士の怒声に揺らいだ。
『円卓』で執務を執っていたアーサー王が振り返ると、そこには地上最強の騎士がチュニックを着て立っていた。
 男盛りを過ぎ、初老にさしかかろうという姿に、出逢ってからの歳月を思い知らされる。王自身はあの頃と比べて、少しの容姿の変化もない──目つきに険が増したきらいはあるが──。
 だが、彼は老いてもなお、竜の因子を持つアルトリアを上回る力を持つ人間であり、そして王の数少ない親友であり──
「ランスロット卿、どうした」
「……グネヴィア妃にお目通りしたいのだが──」
「予に断らずとも、いつでも会えばよい、というより、むしろ予が貴公にお目通りを乞わねばならぬかもな」
 部屋着の王は皮肉めいていった。

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倫敦指令X3 §5

 シオンは凛を見つめた。
「私? なんで私が──」
 選ばれたの、という言葉は遮られた。
「あなたは自分の価値について考えたことはありますか」
「価値?」
「時計塔の男たちから、そしてサルゴンから、私たちから求められる遠坂凛の価値。ゼルレッチの弟子、遠坂紋章の刻印、小聖杯たる妹──それは全て“Sang-raal血統”です。あなたの身体に流れる遠坂の血が皆を争わせる。言い方を変えれば、あなた自身の人格など問題ではない」
「いってくれるわね。でも魔術師なんてそもそもそういうものじゃない。専門化された血統と魔術刻印を受け継ぐための、いわば私たちは運び手に過ぎない。理想や目標に向かい世代を越えて挑んでいくのが魔術師でしょう?」
「然り」
 シオンはうなずいて見せた。
「そしてあなたは一流の魔術師というわけです」

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倫敦指令X3 §4

 遠坂凜が意識を取り戻しかけたとき、最初に目に入ったのは天使の姿だった。
 赤子のような彼らが何かを祝福するかのように飛び回る光景は、幼い頃によく見た気がする。通い慣れた教会の壁や天井には、彫刻と絵画の粋を尽くして似たような風景が描かれていたものだ。
 その意味するところや技巧にはさして関心は払わなかったものの、純粋に「綺麗だな」と思った記憶はある……。
「──あっ」
 がばっと起きあがると、そこは華麗な装飾に彩られた寝室のベッドだった。見上げれば、さっきの天使たちがベッドの壮麗な天蓋に描かれたものであったことに気づく。

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倫敦指令X3 §3

「イタリアにもカレーはあるんですよ!」
「まあ、素晴らしいです! 私、感動しました!」
「何を隠そう私もです!」
 地上十億人の期待を一身に背負う(予定の)秘密枢機卿シエルは、カレーうどんを満足そうにすすり上げた。横にいた地上有数の魔力庫、第七二六聖杯“遠坂”桜も一緒にどんぶりを掻き上げてた。いろいろ鑑みるに、ここ極東の地では概ね世界は平和に思えた。
「あー、はいはい」
 パンパンと手を叩くと、兄、遠野志貴のうんざりした表情を認めた遠野秋葉が、話を元に戻しにかかった。
「泥棒猫の話を聞きましょう。それで?」
 そう言いながらカレー魔人に口を挟む隙を与えぬように、素早く丼に蓋をすると、ワゴンを押すメカ翡翠十号へと突き出す。十号はいまだ丼にかじりつく数人以外には不人気だったカレーうどんを回収すると、室外に待機していたもう一体のメカ翡翠にワゴンごと下げさせる。
 それを見送った史上最高の美女メドゥーサは、瀬尾晶と顔を見合わせてわずかにほっとした表情を浮かべる。この部屋に丸一日もいようなら、サーヴァントですら半実体のウエストラインに影響なしとは言えない。フランス人があれだけのカロリーをどう消費──いや浪費できているのか、不思議でならない。

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倫敦指令X3 §2

Spiritus Domini replevit orbem terrarum,alleluia;
et.hoc quod continet omnia
scientiam habet vocis, alleluia,alleluia,alleluia.
──Exsurgat Deus et dissipentur inimici eius,
et fugiant qui oderunt eum a facie eius.

主の精霊は地上に満つ、アレルヤ
彼は世界に安定をもたらし
あらゆる言葉を知り給う、アレルヤ
──神は身を起こし、その仇敵は四散せり
神を憎む者らはその眼前より逃げ失せたり
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倫敦指令X3 §1

すべての人を照らすまことの光があって、世に来た。彼は世にいた。そして、世は彼によってできたのであるが、世は彼を知らずにいた。
(ヨハネ伝1章9−10)

act3 Alternative Line Altria


 ヒースfraochの花の終わる季節。
 深い森の海にぽっかり浮かぶ島のように、その草原はあった。
 草原の真ん中には、たった一本だけ、ヤマリンゴの木Cu-uertが宿り木にからみつかれて立っていた。けして大きいとは言えないその木になる果実はまだ青く、熟すにはもうしばらく日時を必要としているようだった。
 黒々とした影は小さく真下へと落ちている。
 その影を挟んだ左右に、剣を手にした童女が一人ずつ。それぞれ果樹から十メートルずつ離れて、鏡に映しあうかのように立っていた。

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倫敦指令X2 §18

 欧州で水路の巡る水の都市といえばヴェネツィアだが、その複雑な水路は、彼の地が潟に作られた人工の島であるが故に育まれたものだ。だが、この地は完全な内陸部にあるにもかかわらず、それに劣らぬ錯綜した水路を持っていた。
 つまり、その水路は完全に意図されて作られたものだったのである。
 その地──牛津オックスフォード──の名前は、イングランドにおいてはありふれた地名である。“羊が人を食う”ようになる以前、牛を渡せる浅瀬はことごとくそう呼ばれたからだ。従って、その地が重要な存在となったのは地名によるのではなかったし、それはシオン・エルトナムにとっても同様であった。
 彼女は今、この地の聖メアリ教会St. Mary's the Virginにいた。大学街の中心に位置するリンカーン・カレッジの前にあるその教会堂には、高さ六〇メートルにも達する尖塔が備わっていた。そこに至る階段は狭く急で、尖塔からの見事な景観と引き替えにしても割が合わないとの評判だったが、シオンにとっては関係のないことだった。空から直接降り立ったのだから。
 もうかなり遅い時刻だというのに、高緯度の太陽は名残り惜しげに地平線近くでうろうろしている。その陽の光に赤く染まったテムズ川River Thamesは、この町の区間だけなぜかイシスの川River Isisと呼ばれる。河口の大河ぶりとはうってかわった、小川と言っていいほどの流れを見下ろすシオンを守るかのように、石造りのガーゴイルは教会の屋根の上で彼女を取り囲んでいる。
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