長門有希の観察 §28(HP編9)
仕方ない。
俺はハルヒの指先を外して立ち上がると、いつになく不安げな瞳を揺らしている小天使に向かって手を振った。
「わかった。ちょっとした手品をしてやろう」
「なによ」
今までの儚げな天使の瞳が、瞬く間に小悪魔のそれに変わる。なんであれ挑戦は受けて立つというのがこいつのOSには組み込まれているらしい。
「つまんない手品だったらここの割り勘分は払わないわよ」
なんと払う気があったのか。コンドームといい、この種のことに関してハルヒはとことん平等を貫くつもりらしい。なんとも懐に心強い話だ。
「心強いかどうかはネタを見せてから考えた方がいいわよ」
ハルヒがいつもの挑発的な声色に戻ってニンマリと笑う。もうこれだけで半分目的は達したようなものだが、根本的な解決にはなっていない。
「ああ、その前にだ、絶対に嘘はつくなよ。それと感じた通りのことをそのまま話すんだ。じゃないと賭が成立しないからな」
「いいけど、何をしようっていうの」
ハルヒは待ちきれないように前のめりに俺を見上げた。表情には浅草の演芸場に通い詰める大正の子供みたいな無邪気な期待感があふれてる。こいつは生まれる時代を間違ったのかもな。
「今から俺はあそこのバスルームに行く」
と、俺はガラス張りのモデルルームじみた空間を指さした。
「戻ってきたら、ここの変な空気は一掃されてるはずさ」
「なにそれ」
と、ハルヒはいぶかしげに口を尖らせた。
「だから、嘘をつかれたりしたら始まらないって言ったんだ。お前の主観に寄るところ大だからな」
「あんたが、あのバスルームの中で何かするわけね」
「まあそんなところだ」
「いいわ、行って」
ルールを飲み込んだハルヒが追い立てるように手を振った。俺は一張羅のホワイトフランネルのジャケットを脱いでソファーに投げながらガラス戸を押し入った。付属するパウダールームから振り返ってハルヒの方を見る。
「声、聞こえるか?」
「?」
届かなかったらしく、ガラスの向こうにハルヒが近寄ってきた。ガラス一枚を挟んでお互いの顔を見つめ合う。コンコンとガラスを叩いて合図してみた。
「聞こえるか?」
「多少ね」
桜貝のような唇から小さな声が聞こえた。良いだろう。俺は手振りでハルヒにベッドまで戻るよう指示した。ハルヒがタネを見破ってやるぞという態度満々で下がっていく。さてと。
俺はベッドに座り直したハルヒを確認すると、そのままハルヒに語りかけるように口を開いた。
「仮説の実行は俺に任せてくれるんじゃなかったのか、長門」
俺はハルヒの指先を外して立ち上がると、いつになく不安げな瞳を揺らしている小天使に向かって手を振った。
「わかった。ちょっとした手品をしてやろう」
「なによ」
今までの儚げな天使の瞳が、瞬く間に小悪魔のそれに変わる。なんであれ挑戦は受けて立つというのがこいつのOSには組み込まれているらしい。
「つまんない手品だったらここの割り勘分は払わないわよ」
なんと払う気があったのか。コンドームといい、この種のことに関してハルヒはとことん平等を貫くつもりらしい。なんとも懐に心強い話だ。
「心強いかどうかはネタを見せてから考えた方がいいわよ」
ハルヒがいつもの挑発的な声色に戻ってニンマリと笑う。もうこれだけで半分目的は達したようなものだが、根本的な解決にはなっていない。
「ああ、その前にだ、絶対に嘘はつくなよ。それと感じた通りのことをそのまま話すんだ。じゃないと賭が成立しないからな」
「いいけど、何をしようっていうの」
ハルヒは待ちきれないように前のめりに俺を見上げた。表情には浅草の演芸場に通い詰める大正の子供みたいな無邪気な期待感があふれてる。こいつは生まれる時代を間違ったのかもな。
「今から俺はあそこのバスルームに行く」
と、俺はガラス張りのモデルルームじみた空間を指さした。
「戻ってきたら、ここの変な空気は一掃されてるはずさ」
「なにそれ」
と、ハルヒはいぶかしげに口を尖らせた。
「だから、嘘をつかれたりしたら始まらないって言ったんだ。お前の主観に寄るところ大だからな」
「あんたが、あのバスルームの中で何かするわけね」
「まあそんなところだ」
「いいわ、行って」
ルールを飲み込んだハルヒが追い立てるように手を振った。俺は一張羅のホワイトフランネルのジャケットを脱いでソファーに投げながらガラス戸を押し入った。付属するパウダールームから振り返ってハルヒの方を見る。
「声、聞こえるか?」
「?」
届かなかったらしく、ガラスの向こうにハルヒが近寄ってきた。ガラス一枚を挟んでお互いの顔を見つめ合う。コンコンとガラスを叩いて合図してみた。
「聞こえるか?」
「多少ね」
桜貝のような唇から小さな声が聞こえた。良いだろう。俺は手振りでハルヒにベッドまで戻るよう指示した。ハルヒがタネを見破ってやるぞという態度満々で下がっていく。さてと。
俺はベッドに座り直したハルヒを確認すると、そのままハルヒに語りかけるように口を開いた。
「仮説の実行は俺に任せてくれるんじゃなかったのか、長門」
















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